Short Story

詩・習作2




 「ひずみ」


宇宙はひずんでいる
地球はひずんでいる
人間はひずんでいる

宇宙のひずみは地球のひずみ
地球のひずみは人間のひずみ
人間のひずみは宇宙のひずみ

全てが同じひずみなら
どれかをただすと
全てが正される?

宇宙のひずみを正したら
地球のひずみを正したら
人間のひずみを正したら

人間はひずみに気付いてる?
気付いていないのなら 見ないふりをしているのなら
人間はまたひずむ

人間のひずみは地球のひずみ
人間のひずみは宇宙のひずみ
人間のひずみ 人間はひずんでる



   *



 「出荷⇔返品」


近鉄沿線
見知らぬ場所へ
(或は知った場所へ)
名前だけしか知らぬ場所へ
(或は知りすぎて名前だけがおぼろげな場所へ)

なんだか悲しくなっても
空が見たくなっても
満員電車
もみくちゃにされる僕

箱の中に詰められた人間
朝は出荷
夜は返品
それをただ繰り返す

僕も出荷
僕も返品
なんてちっぽけな人間



   *



 「まもるくん」


他所から持って来た、コンビニのゴミ箱の中のゴミから生えてくる
電車の座席の下に置かれた空の空き缶から生えてくる
道端のタバコの吸い殻から生えてくる
まもるくん

まもるくんは
人の肩とか肘とか膝とか口とか
色んなところから生えてくる

まもるくんは
こっそり顔を覗かせて
何かを言っているけれど
(或は何も言っていない)
人間の耳には届かない高周波

悲鳴より高い音を出すまもるくん
まもるくんで覆われている人らしきものと、たまにすれ違う
どこにもいないし
どこにでもいる
まもるくん

まもるくん



   *



 「僕の世界」


僕が理解できる世界は
この両手をめいっぱい広げたところまで
僕が認識できる世界は
この目玉が見えるところまで

ちっぽけで
さびしい
僕の世界

アリトリコーダーの音は
僕の世界をすり抜けて
果てまで空気を震わせる

ちっぽけで
さびしい
僕の世界

どこかで
アルトリコーダーの音がした