Short Story

詩・習作




ゆらゆら 揺れるロープが結ばれた太い枝
枝を切られ裸になっても木は立っていた
周りを草たちに囲まれて
足元の草を見下ろすことなく
ただまっすぐ上を見て
切られた枝の断面から新しい枝と葉を伸ばす
裸になっても木は立っていた
硬い立派な幹に体を支えられ
幾つもの枝を伸ばし
その枝の一つに結ばれたロープが
葉と共に風に吹かれて揺れている
ゆらゆら ゆらゆら


  *


白い巨人が青空の中を進む
足元に層となった白い兵隊を従えて
進軍を開始する

兵隊は雨を手に持ち
巨人は雷と嵐を手に持ち
進軍を開始する

追い風を背に受けて
少しずつ私たちの居る街へやって来る
進軍を開始する
進軍を開始する


   *


夜が来る度 ベッドに入る度
明日を憂い 明日など来なければいい

沈む夕日に絶望を知った

明日が嫌い 今生きるだけで精一杯の私には
明日のことなど考える余裕がない

昇る朝日に希望を知る

余裕がないことを言い訳にしていただけ
そうだと気付いた


   *

街に僕のために開いた隙間はない
色を失った街 異端の僕
僕の居場所はこの街のどこにも存在しない

冷たいコンクリートの壁が僕を見下ろす
冷たい目をした人たちが僕を見る
ちっぽけな僕は逃げ出すこともできず
その場に崩れ落ちるだけ

怯えて声を上げることもできず
僕は独りで震えるのです
この冷たい街で
僕は生きていくしかないのです


   *


「君」は僕を責め立てる
独りぼっちになった僕を
どうして「君」は責めるのか
僕の心にぽっかり空いた穴
そこに居たのは一体誰か

「君」が僕を責め立てる
泣いてばかりの僕を
どうして「君」は責めるのか
僕の心にぽっかり空いた穴
僕が失ったものは一体何か

何一つ残っていない今の僕
外では土砂降りの雨
今の僕の心を表しているかのように
「君」が僕を責め立てる

大切な人を失った僕を
「君」は責め立てる
「君」が責め立てる度に僕は泣く
僕が今いる場所は
「君」に支配された世界
「君」から逃れられない世界


   *


夜に堤防を歩く
街灯のないまっくらやみ
雑草の中から声がする
虫の合唱 五月蝿いくらい

川の中州には大きな草
昔はとても綺麗な川だった
今はもう見る影もないほどに汚れた川
一見すれば綺麗な水
せせらぎに心が休まる
けれどその中身は
人の生活で汚れきったモノ

睡眠シグナルを出す頭を起こす
帰らなければ

ふと視界に入った光を追う
淡い光が空へと昇る
それは一つ二つ、三つと増えていく
気付くと辺りに無数の光

「蛍」
それがそこに居た
気付いた瞬間に消える光
全てが消える

かつてここには蛍が居た