Short Story

月とスッポン




 月とスッポンとはよく言ったものだ。

「馬鹿なの?私たちは絶対に結ばれることなんてないのに」

 僕が愛した人は、使用人として僕が働いている屋敷のお嬢様だった。結ばれないと分かっていても、愛し合っていた。

「私と貴方の身分差は、例えるなら月とスッポンなのよ」」
「なら僕はスッポンらしくお嬢様の指に噛み付いて、一生離れません。噛む指はもちろん、左手の薬指です」

 お嬢様は顔を真っ赤にして、泣いていた。僕はお嬢様の左手を取って、薬指に指輪をつけた。ほら、僕はもう離さない。